弱いは強い(二)

昨日に引き続き、よわいはつよいプロジェクトについて。
見れば見るほど、共感しかなく、我ごとのように「そうだよね、辛かったよね」との思いが沸々と湧いてきました。
今日もいくつかの声を紹介します。

元ラグビー選手
(2022年引退)
元ラグビー日本代表
谷田部洸太郎

人見知りで人前に立つと緊張してしまう性格でした。 ラグビーに出会い高校と大学でキャプテンをやらして頂き、チームをまとめる存在でいなければならないと考えたり、責任やプレッシャーに押し潰されそうになり嫌になる日もありました。 でも、自分はこういう性格、自分は人見知りで話すのが苦手だと仲間に打ち明けることができた時から自分らしさが出せるようになりました。 自分の弱さを自分自身で認めて、仲間に弱さを見せることで、みんなと繋がることができた。 みんなとコミュニケーションを取ったことで楽しくなりました。 自分らしさでいいんだって思います。

よわいはつよいプロジェクト

僕もまさしく「人見知りで人前に立つと緊張してしまう性格」でした。
しかし、ずっとそんな自分が嫌で、とても「人見知り」だとは言えませんでした。
だから、せめて「人前で話すのは苦手なのだ」と言うのが精一杯でした。

特に誰かを責める意図は全くないのですが、実際には、「とてもそんな風には見えない」と驚かれることがほとんどでした。
緊張のあまり「本当は、この場から、今すぐにでも逃げ出したいんだけど」といったら、完全に冗談だと思われました。
このように受け取られるのも、おそらく、「ポーカーフェイス」で隠し続けてきたためだと思います。あからさまに分かれば、きっと周囲も応援したり、温かい目で最初から見られていたのでは・・・と思います。

「逃げ出したい」
僕は、いつもその思いとの戦いでした。
「いつか、「逃げ出す」の気持ちが優ったらどうしよう・・・。」という訳の分からない心配までする有様でした。
一番きつかったのは「あなたは◯◯なのに、そんなんでどうするの」の言葉でした。そんなことはこちらも百も承知です。それでも辛いから、弱音を言っているのであって、こう言われると、この人の前では決して、本音を言うわけにはいかないと、ますます貝になりました。

上記のラグビーの谷田さんは「仲間に弱さを見せることで、みんなと繋がることができた」ので本当に良かったと思います。
「人見知りで人前に立つと緊張してしまう性格」でも、慣れると、そんなに緊張せず上手く振る舞えることは確かにあります。経験を積むごとに、自分自身の制御にも長けてきます。
ただ、基本的な性格傾向は変わらないので、ある程度に、不安も緊張も味わいます。いつもそれに勝てる訳でもありません。
だから、自分を上手く活かす術と共に、周囲の理解を得るという環境整備も不可欠なのです。
汚れた池でも平気な頑丈な魚は確かにいるでしょう。しかし、やはり限度があるのです。

元女子バレーボール選手
2004年オリンピック日本代表
大山加奈

日本一になれなかったら、オリンピックに行けなかったら、私にはなんの価値もない、そんな風に思い込んでしまっていました。 小学生のころから日本一を獲り続け、トップを走ってきた私は、結果を残し続けること、トップに居続けることでしか自分の価値を見出せなかったのです。 これが私の最大の弱さであったと思います。 弱音を吐くことも弱さをひとにみせることもなかなかできず、弱っちい自分を必死に隠して強いひとを必死に演じていました。

よわいはつよいプロジェクト

この気持ちも、痛いほどよく分かります。
僕も、基本、自分に自信のない人間だったので、仕事で認められることはとても嬉しく、誇らしくありました。
しかし、期待に応えられなくなったら、またあの時の非力な自分に戻るのではないかとの不安はありました。

「◯◯ができなかったら、自分には価値がない」
「◯◯がでなければ、自分に価値を見出だせない」
こんな感覚は、僕も同じだったな、と思います。ちなみに、今は、そういったものからは解放されております。

その間違った考え方のゆえに、僕は仕事依存症に突き進んでいきました。
自分でも異常だったなと、薄々思いますが、今思い出しても、間違いなく異常で不健全だったと思います。

「弱っちい自分を必死に隠して強いひとを必死に演じていました」も全く同じです。
一体、何と戦っていたのだろうか・・・と、今となっては言えるのですが、その時は、その自覚すらままならず、苦しんでいたのです。

確かに、仕事に苦しさがあるのは当然です。
しかし、上手くいかないことで、自分の存在意義が無いなどと思ったり、思い詰めすぎるのは、普通ではありません。

僕が、これらから立ち直るきっかけは何だっただろうか。
思い起こすと、初期の段階で「仕事って、そこまでしてするものなのか」といさめてくれた人がおりました。
その時に、「僕のこの考えは普通じゃないんだな」という楔を心に打ち込むことができました。だから、折々に、その言葉を思い起こすことはできました。それを聞いて、すぐに改善する・・・とは、いきませんでしたが、振り返るきっかけとなったのは間違いありません。
それから、数年を要して、ようやく、過度な思考から抜け出すことができました。

もっと早く、力を借りていたら、回復も早かったと思います。
だから、思い詰め過ぎている自覚をもっと持てたのなら、と思わずにはいられません。
人知れず、自分の状態をネットで調べていた時期があったので、この記事をいつか、僕と同じように悩んでいる人がそれを見て、自分を知り、元気になっていくきっかけとなれば、幸いです。

誤解を恐れずに言えば
強い人などおらず、弱さを知って、支えを得て、対応の仕方を学んだ人がいるだけなのだと思います。
きっと、「本当に強い人」は、自分の限界も知っていると思います。
「強そうに見える人」は、その内側は、そうではないのかもしれません。

自分が強いか、弱いか。
きっと、どっちでもいい、どうでもいい。
自分を知り、自分の活かし方が分かっていれば、それで十分です。


投稿者プロフィール

中田 雅也
中田 雅也結い心理相談室
青森県八戸市・階上町を中心にカウンセラーとして活動しています。また、電話・オンラインカウンセリングもご利用いただけます。
普段使いのカウンセリング(日常の悩み事)と援助職のためのカウンセリングをご提供しております。