『支援者のミカタ』は、個人の経験(支援者、管理職、組織の長)を通して、支援者こそ支援が必要であるとの考えに根ざして、力を入れて取り組みたい専門分野に位置付けております。

1、支援者の定義(一)

支援者の定義として、具体的にはソーシャルワーカー、カウンセラー、ケアマネジャーなどの援助職、それ以外にも医師や看護師、療法士など治療的関わりを行っている医療従事者、教師や保育士などの教育・保育関係者、また、資格職だけでなく、事務員としてそれに準ずる業務に当たっている方を対象に考えております。

2、支援者の定義(二)

職域を問わず、組織(大小を問わず)の長としてリーダシップを発揮する立場にある方。また、部署や部門の長として、管理職やマネージャー職の職位にある方をも対象に考えております。

3、支援者に対する支援

人を支えるという行為は、単に肉体的な疲労だけでなく、精神的疲労が非常に大きく、燃え尽き症候群などを引き起こしやすいと言われます。人を支える役割に対する周囲の期待、また、当事者も責任感の強さから我慢することに慣れてしまっていたり、たくさんの負担を抱え込むことが習慣化していることが少なくないと思います。他人を支えることに慣れていても、実は、自身が最も支えを必要としていることを見失いがちなのではないでしょうか。

職能によってはスーパービジョンとして、支援者の資質向上のために指導者からの示唆や助言を受けることが不可欠と教わりますが、スーパービジョンだけでなく、もっと心の整理だったり、業務上の傷付き傷んだ心をケアする機会、カウンセリングが日常的に必要なのではないかと思います。もちろん、同僚等の間で、ピアカウンセリングのようにできる機会があれば最善なのですが、悩みや弱みを素直に打ち明けることは決して簡単なことではありません。

決して形式ばって、堅苦しく考えることなく、支援する立場にある者の悩みは、支援経験者がもっとも共感しやすく、そのお立場を理解しやすいのではないかと思います。僕もまた支援者であるからこそ(マネージャー、リーダー経験者でもある)、活かせることがあると考えます。

支援者となる方には、少なからず、支援者を目指した強い思いやきっかけ、動機があったりします。それは個人の経験、内面にめざしたものであり、支援者として躓いたり、大きな傷を負った時は、それらの背景も含めて、整えていく必要があると思います。その内面の深い部分は、上司や同僚のような近い関係だと言いにくいこともあります。そんな時、当事業所のような独立した機関であれば、却って気にすることなく、支援者の悩みをお話しすることが可能です。

何をお話ししたいかが定まっていなくても、何を取り扱いたいのか漠然としていても、あるいは、題目や目標が明確にあって臨むのも良し、あなたがお話ししたい事柄に沿って、お話をお聞きいたします。

4、支援者に対する支援を始めようと思ったきっかけ

僕は、ソーシャルワーカーですが、大変さとやり甲斐が表裏一体であったと感じます。同時に「よくここまでこれた」と思うことも何度もありました。それ程までに、楽しさだけでは語られない大変さ、苦しさもあったからです。これを全く言わずに、ただ「楽しい」とだけ形容したら、それでは嘘になってしまいます。今でもSNS上では、ソーシャルワーカーやケアマネジャー、医療従事者も、その大変さを訴える「呟き」にあふれております。僕自身、クライエントやそのご家族からの厳しい言葉、組織内でも期待に応えられないがための叱責(それ以上のもの)、連携機関からの厳しい評価を受けたことは何度もあり、何度も打ちのめされそうになりました。

やがて上司となり、部署を管理する立場となりました。初めて部下を持った時、潰れずに長く働いてもらうためにも、まず仕事を教えると共に、まず自身の身を守ること、自身を癒すことを教えなければならないと思いました。そして、自分自身、慣れない管理業務をすることにもなり、理論だけ学んでも落とし込むのが不可能な管理職業務には、大変悩まされました。今でも、「管理職」と検索すると、否定的な言葉が並ぶ現実があります。管理職は、数からして非常に少数であり、管理業務の指導伝達も容易ではない性質の采配があります。そのような中で手探りで管理業務にあたる各組織の管理職の苦悩はいかほどかと思います。

そして、所属機関とは別に、県の職能団体の長の役割を三十代前半に経験しました。成熟して、整備された組織であれば、長の業務内容も含めて整備されているかもしれませんがそのような組織は稀であろうと思います。多くは、なった時から手探りで覚えていくしかないのが現状です。これについては、組織によって差異が大きいため安易に大変だとも、そうでないとも言いにくのですが、それでも、プレイヤー(現場担当者)、マネージャー(管理者)、リーダー(長)とでは、役割が異なります。渉外、ビジョン作成、活動計画、組織内整備等、目を配るべき範囲は多岐に渡ります。個人的には、元来、内向的で非常に苦手に感じる場面(特に、大勢の前での挨拶等)は多々あり、消耗の度合いは非常に大きかったのは事実です。

マネージャー(管理者)、リーダー(長)ともなると、人前で安心して弱音を吐くこともままなりません。不用意なことを口にすると、動揺が走り、その言葉が一人歩きするからです。当人は何も変わらなくても、周囲の当人を見る目が変わるからです。そう言ったことも含めて、マネージャー(管理者)、リーダー(長)はとかく『孤独』とならざるをえない側面は間違いなくあると思います。これは、なって初めて気付いたことです。しかし、なった後に、それに対する対応ができなければ、内なる力が枯渇した時に、容易に燃え尽きてしまうでしょう。そして、マネージャー(管理者)、リーダー(長)の元気がない状態は、組織や集団に良い影響を及ぼしません。だからマネージャー(管理者)、リーダー(長)から『大丈夫だよ』という雰囲気が漂っていることはとても大事なことであり、同時に、一人では決して成し得ないことです。組織内の協力も不可欠ですが、マネージャー(管理者)、リーダー(長)が安心して悩みや弱音を打ち明ける場を確保することは、同じくらい大事なことだとも思います。

支援者の『ミカタ』の込めた思い

   1、支援者の味方であること
   2、支援者の見方を柔軟に再構成していくこと
   3、一人の支援者としての強みを再認識すること
   4、支援者のやり方を必要に応じて見直し、更新する