僕が役職に就いた時の話(一)
こんにちは。
今回は、役職に就くということについて、僕の経験と考えをお伝えします。
僕ִは、自分自身について、上昇志向は無く、地位や名誉にも関心は無いのだとずっと思っておりました。
ある時、大熟練者のソーシャルワーカーが、雑談の延長上に「男は、みんな、偉くなりたい生き物なんだ」と言っている所に居合わせました。
個人的にはピンとこなくて、「そういう男性が多いんだね」と他人事のように思っておりました。
そこから、数年を経て、近隣のソーシャルワーカーとのお酒の席での話です。
それぞれ、役職に就いているかどうかが話題となりました。
そこで、複数人が、「管理職では無いけれど主任の役職に就いている」と言っておりました。そして、「主任と言っても、何の権限もないし、平と変わらないけどね」と付け加えておりました。
その時、僕の中に、これまでに感じたことのない感情が湧いて来て、自分でも驚きました。
それは、『嫉妬』でした。
なぜ、嫉妬を感じたのか。自分の組織内の業務で必死に頑張っている自負があり、そのことを『承認して欲しい』という強い思いがあったのだと思います。
どのような判断を持って、役職に就けるかは、組織の人事の基準に拠ります。
また、役職に空きや配置の必要性がなければ、就けようにも、就けられません。
それも踏まえた上で、業務における実績が出せていること、複数人をまとめる力が求められ、結果的に周囲からの評判も伴うことも一つの目安になると思います。
実際には、主任や係長といった役職並みの業務実績(人事評価を含む)を、役職に就く以前の状態から残せていることが自ずと条件とされるように思います。
僕の場合も、役職に就く前から、やや難易度の高い仕事を任されたりしました。
今となっては、非役職者(平社員)に任せるような業務ではないと思うようなことを任されていたと思います。具体的には新しい部署の発足、組織内の新しい制度の開発等です。
直属上司が道筋を作ってはくれましたが、兼務の上司であったため、設計図を任されて、実際の組み立てを僕が担うような状態でした。当時は、そんな感覚もなかったので、ただただ必死でした。
そんな手探りな状況が数年続いたので、僕の中にも、「認めてくれるもの」を段々と欲するようになっていたのだと思います。
認めると言っても、果たして何を求めていたのか。
「よくやったね」と言葉で誉めてもらっても、おそらく納得しなかったと思います。
「賃金」が上がるかと言えば、そのようにできる仕組みはありませんでした。
結局、「役職に就く」ことで「業務の範囲」や「権限」を持たせ、役職手当という形で給与が上がるというのが現実的です。
評価の仕組みは組織によって、さまざまだとは思いますが、僕が所属していた組織では上記のようになりました。
僕の所属していた組織(医療機関)では、ソーシャルワーカーは「事務部門」に所属し、事務部門の職位での初等の役職は「係長」でした。
係長の役職に就くと内示を受けた時、正直、嬉しかったと思います。
なぜならば、自分がやって来た仕事と、その一連の苦労が報われて、組織に評価されたのだと思うと、自らの承認欲求も満たされて、誇らしさもあったと思います。
しかし、現実として、嬉しかったのは内示を受けた最初の数日だけでした。
そのあとは、「自分に係長が務まるだろうか」という重圧が直ぐにやって来ました。
役職に就いていない状態で、つまりは重圧を受けない状態で仕事をするのは実は楽な側面があります。しかし、役職に就いていると、「下手な仕事をする訳にはいかない」という気負いが生まれます。
これは、役職に就く前には意識したことのない感覚でした。
人事異動は、社内掲示によって公式発表されます。
人事異動は、どの組織もそうだと思いますが、重大行事です。人々の期待、失望、噂が渦巻く時でもあります。
その時も、内示によって知らされてはおりましたが、僕自身は、ドキドキして仕方がありませんでした。
「何で、あいつが係長なんだ」と思われていないだろうかと。
あんなに認めて欲しいと思っていたのに、現実の重圧の中ですっかり萎縮してしまっておりました。
「新たな段階に進んだのだ、頑張らなければならない」との意気込みが半分、「やるしかないのだ」というやや悲壮感にも似た思いが半分です。
今となっては、「そんなに気負わなくてもいいよ」と言いたくなるのですが、元来、小心者の僕は、実は大いにビビっていたのは間違いありません。
昇進とは不思議な機会です。
嬉しさと自他の期待、不安がそれぞれ入り混じり、嬉しいだけでもなく、不安というだけでもなく、何とも表現が難しい感情です。
世の人々は、昇進したら、こんな気持ちなのだろうか、と思わずにいられませんでした。
(次回記事に続く)
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