決断と苦悩
半沢直樹というドラマ(2013年、2020年)が好きです。
物語としても面白いですが、いわゆる勧善懲悪(善を勧め、悪を懲らしめる)仕立てで、スカッとします。
銀行員の実際はどうなのかはわかりません。
それにしても、あのような日常がくり広げられたら、命がいくつあっても足りないでしょうね。
このドラマ(1)の中で、銀行が経営再建を支援する伊勢志摩ホテルが、外資の傘下に入るかどうか、という判断を迫られる場面があります。
湯浅社長が、回答期限ギリギリまで悩み続け、最後は傘下に入る決断を下します。
その場面の少し前に、内藤部長が『こういう決断は、時間ギリギリまでできないものだ。まだ30分ある。必ず湯浅さんは決断する。』と言います。
この台詞は、そういう経験をした者にしか言えない台詞だと思いました。
いぶし銀な大人な台詞にシビれます。
大変だった決断
決断とは、難しいものです。
誰しもが、大なり小なり、何かしらの決断を下しております。
人生においても、進路だったり、就職だったり、結婚だったり、岐路でたくさんの決断をしてきたことでしょう。
僕も、もちろんそうです。
僕は比較的に、迷わないで決断を即決にしてきた部類ではないかと自分では思います。
迷いが無いのか、簡単に判断を下し過ぎるのかはさておき、その分、悩んだ場面のことはよく覚えております。
大変だった決断として、すぐ思い浮かぶのは、職能団体の長を引き受けた時です。
この時は、全く即決できませんでした。大変名誉ある役割でもありつつ、そんな大役はとても自分には務まらないと、ビビってもおりました。
直ぐ断れもしなかったのは、自分が「副」の役職に既に就いていて、決して傲慢になって言うわけではありませんが、他に適任がいなかったからです。
お前が逃げていいのか。
お前がやらなくてどうするのか。
直接には誰からも、何も、重圧になるようなことは言われませんでした。
しかし、周りから言われなくても、自分が自分にそう問うてくるのでした。
そうかと言って、やります、とはとても言える心境ではなく、前にも、後ろにも進めず、閉ざされた部屋に入って出られなくなったかのような閉塞感でした。
半沢直樹の場面でも、難しい決断を、短い時間で出さなくてはなりませんでした。
当時の僕の場面でも、急に降って湧いてきた話で、数週間で決断をしないといけない状況でした。
こう言う時は、時間があっという間に過ぎます。
考えを整理しようにも、整理した所で決断は出来ません。
だから、僕も、長を決める会議に、その時になっても尚、自分の決断をしきれないままに臨みました。
そして、できるなら避けたいことを表明しました。
堂々巡りの議論。
僕の苦悩。
長時間、腹の据わらない僕に付き合う羽目になった当時の出席者には申し訳なく思います。
無数のやり取りを経て、全力で皆が僕を支えてくれると言ってくれたこと
これ以上、決断を先送りにする訳にはいかないこと
もともと職能に対する想いは、嘘偽りなくあったこと
これらから、「やります」とやっと言えました。
言えた瞬間に、やっと胸の支えがとれました。
結局、決断できない時が一番苦しいのです。
決断してしまえば、後はやるだけです。
腹が据われば、後は何とかなります。
今となっては『何だ、そんなこと』と思えるのですが、あの時のことはまだよく覚えているのです。
33歳の時だったと思います。
もっと難しい決断を自分ではしてきたつもりなのですが、それでも迷う時は迷うものです。
決して、事の大小では測れない何かがあるのだと思います。
自分の人生においては、退職や移住の方がはるかに大変でしたが、この時の決断との向き合い方が活きたのは言うまでもありません。
難しい決断の苦悩は、本当に辛いものですが、いつかどこかに繋がって、役に立つことがあります。
丁寧に生きるに越したことはない。
そのように思います。
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